飲食店を経営するうえで、必ず知っておきたいのが「風営法(風俗営業法)」。
営業形態によっては食品営業許可とあわせて風俗営業許可が必要になるため、知らないうちに違反行為をしていることもあります。
その場合、ネットの口コミやSNSの書き込みで拡散・通報され、最終的には警察による立ち入り調査が行なわれることになるでしょう。
この記事では、法律にあまり詳しくないという飲食店経営者向けに、風営法を分かりやすく解説します。
主な違反行為とその罰則についても説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
風営法は子供たちを守るための法律
「風営法(風俗営業法)」の正式名称は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。
「風俗」とは、社会集団における衣食住など日常生活のしきたりや習わし、風習のこと。類似語としては「世俗」や「習俗」が挙げられます。
一般的には「風俗=性風俗」というイメージが強いため、風営法は性風俗店のみが対象だと考えている人も少なくありません。
しかし、そもそも風営法の主な目的は「子供たちが健全に育つことを妨げるような悪い影響から守ること」です。
そのため、風営法では性風俗店に限らず風俗営業を行なう店舗を対象として、「大人向けの店の時間や場所を制限する法律」や「子供がその店に入ることを防ぐためのルール」が定められています。
【参考】 風営法 第一条(目的)
この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。
規制対象となる風俗営業の定義
風営法では風俗営業の定義として、5つの営業形態が設定されています。
- 接待を伴う飲食店営業
- 店内の明るさが10ルクス以下(ロウソク1本分程度の明るさ)の飲食店営業
- 他からの見通しができない5平方メートル以下のボックス席を設けた飲食店営業
- 遊技設備を設置して客に遊技をさせる遊技場営業
- 射幸心をそそる遊技設備を設置して客に遊技をさせる営業
営業形態のなかで特に注意したいのは、「接待」についてです。
警察庁が公表している接待の定義は、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とされています。
判断基準は、「特定少数の客の近くにはべり、継続して談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」。
また、ショー・歌唱・ダンス・ゲーム・客の身体に接触する行為なども接待と判断されます。
接待サービスの認識は人によって異なることも多いので、もし判断に迷った場合は必ず法律の専門家に相談することが大切です。
【参考】 風営法 第二条(用語の意義)
この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
二 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの
四 まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
五 スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
風営法対象(風俗営業)の具体例
接待飲食等営業を行なう風俗営業の例としては、キャバレー・キャバクラ・ホストクラブ・スナック・バーなどが挙げられます。
低照度の店内でボックス席が設けられていることも多いため、風営法の対象となる店としては分かりやすいと言えるでしょう。
また、遊技場営業を行なう風俗営業の例としては、マージャン店・パチンコ店・ゲームセンターなどが挙げられます。
ギャンブルを行なう娯楽施設や、子供の入店が制限される施設と考えると、イメージしやすいかもしれません。
飲食店が風営法の対象となる具体例
飲食店では基本的に、ウェイトレスやウェイターがお客さんの注文を取って料理を配膳します。
しかし、「談笑の相手も兼ねるような接待サービス」も行なうのであれば、喫茶店やカフェという体裁であっても風俗営業の扱いです。
例えば、ここ数年人気のある「コンセプトカフェ(コンカフェ)」も、風俗営業にあたります。
そのため、一般的な飲食店から始めた経営者の中には、風営法を知らずにコンカフェを開業して摘発されることもあるようです。
主な風営法違反行為7つ
次に、主な風営法の違反行為について解説します。
厳密には営業形態によってさまざまな違反・禁止行為が挙げられますが、ここでは風俗営業に関する基本的な7つをとり上げました。
違反行為①無許可営業
風俗営業の店を経営するのであれば、警察署の生活安全課で風俗営業許可の申請をしなければなりません。
したがって、無許可で営業を行なうと風営法違反になります。
この場合「風営法の存在を知らなかった」では済まされず、必ず刑事罰の対象となるため注意が必要です。
また、無許可営業は風営法の刑罰の中で最も重い処罰を受ける可能性があります。
風営法では、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされていますが、悪質だと判断されれば更に重い処罰となるかもしれません。
【参考①】 風営法(営業の許可)第三条
風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第一項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
【参考②】 風営法(罰則)第四十九条
次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条第一項の規定に違反して同項の許可を受けないで風俗営業を営んだ者
違反行為②許可証を掲示していない
風俗営業の店を経営する場合、許可証を店の見やすい場所に掲示しなければいけません。
もし掲示しなかった場合、風営法では30万円以下の罰金となります。
許可証が見えない場所にあると、お客さんが風営法に違反していると勘違いして通報する可能性もあるかもしれません。
したがって、お客さんが分かりやすい位置に掲示するのがオススメです。
【参考①】 風営法 第六条(許可証等の掲示義務)
風俗営業者は、許可証(第十条の二第一項の認定を受けた風俗営業者にあつては、同条第三項の認定証)を営業所の見やすい場所に掲示しなければならない。
【参考②】 風営法 第五十五条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第六条(第三十一条の二十三において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
違反行為③名義貸し
風営法の許可を受けた自分の名義を、他人に貸して風俗営業を行わせるのは風営法違反となります。
名義貸しは、営業許可の取り消しや営業停止といった処分の対象です。また、風営法の刑罰の中で最も重い処罰を受ける可能性があるでしょう。
違反すると、風営法では2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。
【参考①】 風営法 第十一条(名義貸しの禁止)
第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない。
【参考②】 風営法 第四十九条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三 第十一条(第三十一条の二十三において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
違反行為④客引きやつきまとい
店に客を呼び入れるために立ちふさがったり、つきまとったりする行為も風営法違反となります。
風俗営業を行なう店では勧誘のために安易に行なってしまうことも多いので、注意が必要です。
違反すると、風営法では6カ月以下の禁固刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。
【参考①】 風営法 第二十二条(禁止行為等)
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
【参考②】 風営法 第五十二条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十二条第一項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の二十三及び第三十二条第三項において準用する場合を含む。)、第二十八条第十二項第一号若しくは第二号(これらの規定を第三十一条の三第二項の規定により適用する場合を含む。)又は第三十一条の十三第二項第一号若しくは第二号の規定に違反した者
違反行為⑤18歳未満の従業員が接待
18歳未満の従業員に接待させると、風営法違反となります。
また、22時~翌日6時までの時間に、18歳未満の従業員を客と接する業務を行なわせるのも風営法違反となるので注意しましょう。
違反すると、風営法では6カ月以下の禁固刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。
【参考】 風営法 第二十二条(禁止行為等)
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
三 営業所で、十八歳未満の者に客の接待をさせること。
四 営業所で午後十時から翌日の午前六時までの時間において十八歳未満の者を客に接する業務に従事させること。
違反行為⑥18歳未満の客を入店させる
18歳未満のお客さんを店に入店させると、風営法違反となります。
また、遊技設備のある一部の店(ゲームセンター等)の場合、22時~翌日6時までの時間に18歳未満のお客さんを入店させるのは違反行為です。
違反すると、風営法では6カ月以下の禁固刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。
【参考】 風営法 第二十二条(禁止行為等)
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
五 十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること(第二条第一項第五号の営業に係る営業所にあつては、午後十時から翌日の午前六時までの時間において客として立ち入らせること。)。
違反行為⑦20歳未満の客に酒類・たばこを提供
20歳未満のお客さんに酒やたばこを提供すると、風営法違反となります。
販売する際は、必ず年齢確認をするようにしましょう。
違反すると、風営法では6カ月以下の禁固刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。
【参考】 風営法 第二十二条(禁止行為等)
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
六 営業所で二十歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。
風営法の違反行為は口コミ・通報でバレる
口コミサイトやSNSが浸透している近年では、風営法に違反していると、口コミや通報(タレコミ)でバレることも多いようです。
客側としては、店の違反行為を見逃した自分も共犯扱いになる可能性があるため、通報せざるを得ません。
したがって、風営法に違反している店は、遅かれ早かれ警察の立ち入り調査が行なわれることになるでしょう。
もともと風俗営業の店は悪い口コミが目立ちやすいため、もし経営者が風営法を知らずに店を運営していた場合、違反行為はすぐにネット上で拡散されてしまいます。
それゆえに、日頃からネット上の誹謗中傷や風評被害をチェックしておくことが大切です。
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【まとめ】風営法を学んで違反行為がないかチェック!
風営法(風俗営業法)は、喫茶店やカフェなどの一般的な飲食店でも、営業形態によっては適用されます。
特に注意すべきなのは「接待」。そして、18歳未満への対応です。
違反行為に気付かず、いつの間にかネット炎上を引き起こしてしまうような事態にならないためにも、風営法についてしっかりと理解しておきましょう。
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。