「レピュテーションリスク」とは、企業やサービス、ブランドの評判が下がる危険性という意味を持つ言葉です。
特に近年では、物を購入する時・飲食店を利用する時・サービスを利用する時・就職活動をする時・取引先と仕事を開始する時など、まずはインターネットやSNSで情報を集めてから行動を起こす人は多いかと思います。
情報を取る側からすると大変便利な世の中ですが、情報を見られる側からすると様々なリスクがあることに気づかされます。
今回は、過去に起こったレピュテーションリスク事例と、レピュテーションリスクとなる原因、具体的な対策について詳しく解説していきます。
レピュテーションリスクに備えて対策を打っておきたい方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
企業におけるレピュテーションリスク事例5選
企業におけるレピュテーションリスク事例をご紹介します。
- 居酒屋チェーン「塚田農場」で優良誤認表示
- 「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」で情報漏洩
- 「ピザーラ」フランチャイズ契約店でバイトテロ行為
- 「オリンパス」で損失隠し
- 「ローソン」フランチャイズ契約店でバイトテロ行為
今回ご紹介する内容は、どの企業でも発生し得るレピュテーションリスクとなっています。
それでは一つずつ見ていきましょう。
レピュテーションリスクの種類についてはこちらで詳しく解説▶︎
事例①居酒屋チェーン「塚田農場」で優良誤認表示
エー・ピーホールディングスが運営する居酒屋チェーン「塚田農場」は、『宮崎地鶏を使用』『地鶏一筋』と表示していたにもかかわらず、提供の一部にタイ産のブロイラー(若鶏)を使用していることが判明。優良誤認表示であるとして、900万円超の課徴金支払いが命じられました。
優良誤認表示とは
優良誤認表示とは、消費者に対して実際の商品やサービスよりも優れていると誤認させる表示のこと。
【参照】ブロイラーを「地鶏」と表示 消費者庁が措置命令|日本経済新聞
事例②「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」で情報漏洩
「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」を運営するベネッセコーポレーションで、最大3,504万件の顧客情報が流出。取り調べによって、システム関係を請け負っていた関連会社の従業員が外部に情報を転売していたと判明しました。
信頼の大幅な低下により顧客離れが相次ぎ、経営は赤字に転落。責任部署の取締役2名が辞任、転売したエンジニアは逮捕されました。
【参照】【ベネッセ情報漏洩】39歳の派遣SE逮捕 ギャンブルで借金「250万円で売却」|産経新聞
事例③「ピザーラ」フランチャイズ契約店でバイトテロ行為
宅配ピザチェーン「ピザーラ」を運営するフランチャイズ店で、アルバイトスタッフが厨房内の冷蔵庫やシンクの中に入っている画像をネット上に投稿。バイトテロ行為として炎上に発展しました。
事態を受けピザーラの運営本部とアルバイトスタッフが通っている高校が謝罪文を発表したものの、フランチャイズ店の信頼回復には届かず破産に追い込まれる結果に。
バイトテロとは
バイトテロとは、飲食店や小売店で働く従業員が勤務先にある什器・食品・商品・備品等を使用して悪ふざけを行う様子を画像や動画におさめ、SNSなどにアップし、炎上を起こしてしまう行為のこと。
【参照】冷蔵庫に入った写真撮影 ピザーラでアルバイト女性 |千葉日報
事例④「オリンパス」で損失隠し
2011年、光学機器・電子機器メーカーのオリンパス株式会社で1,000億円を超える損失を隠していたことが、社員からの内部告発と月刊誌による取材で発覚します。取締役会で社長が解任され、取締役も辞任する運びとなりました。
会計の従事者が損失を認識していながら意図的に隠蔽する、いわゆる「飛ばし(簿外債務)」という手法で損失を10年にわたって先送りしており、刑事・民事の両方での訴訟に発展しました。
【参照】オリンパス損失隠し、旧経営陣3人の賠償が確定 最高裁|朝日新聞
事例⑤「ローソン」フランチャイズ契約店でバイトテロ行為
コンビニエンスストアチェーン「ローソン」のフランチャイズ契約店舗で働くアルバイトスタッフが、店内のアイスの冷蔵ケース内で寝転がっている様子をSNS上にアップし炎上。
「もうローソンではアイスを買わない」などとローソン運営本部にも批判が殺到し、本部は同店舗とのフランチャイズ契約を解除しました。
事例から学ぶレピュテーションリスクが発生する原因5つ
レピュテーションリスクが発生する原因を事例から読み解くと、以下の5つに起因することがわかります。
- コンプライアンス違反
- 従業員による不祥事
- ユーザーや取引先からの評価・評判
- 過大評価による格差
- デマや風評被害
対策を打つためには、レピュテーションリスクがどのようなシチュエーションから発生するのかを考える必要があるでしょう。それでは詳しく見ていきます。
原因①コンプライアンス違反
コンプライアンスとは、「法令」「就業規則」「企業倫理(モラル)」「社会規範(ルール)」を守るという概念を持つ言葉です。近年よく耳にしますが、単に法律を守るというだけではなく、実は多くの意味を含んでいるのです。
コンプライアンスの内容
- 法令
- 就業規則
- 企業倫理(モラル)
- 社会規範(ルール)
先ほどご紹介した事例も、すべてコンプライアンス違反から発生していることがわかります。
コンプライアンスという言葉が飛び交うようになったのは、規制緩和や法改正によって企業が自由に事業を行えるようになったことで、不祥事が相次ぐようになったという背景があります。次第に企業責任が重くなっていき、損失を防ぐ自己防衛としてコンプライアンスという概念が定着するようになりました。
加えて、SDGsや地域貢献といった社会的な責任も求められるようになっています。
原因②従業員による不祥事
レピュテーションリスクは、企業や関連会社で働く従業員にも潜んでいます。バイトテロ行為や意図的な情報漏洩、データ偽装なども従業員による不祥事として位置付けられます。
また、社内のセクハラやパワハラ、悪質な労働環境も、企業の信頼と評判を損なうレピュテーションリスクとなり得ます。こういった社内の情報は、Googleマップのクチコミや、会社の評価サイト「転職会議」や「OpenWork」といったプラットフォームで匿名投稿が可能です。『まさか自社の従業員が告発することはないだろう』と甘く見ない方が良いでしょう。
原因③ユーザーや取引先からの評価・評判
誰もがSNSアカウントを持つ時代ですから、人を相手に事業をしている全ての企業において第三者によるレピュテーションリスクがあると考えるべきです。
「○○店でこんな酷い接客を受けた」「一緒に仕事をしているが、○○社の製品は使わない方が良い」「○○で買い物をしたら新品とは思えない商品が届いた」というような投稿は、フォロワーの少ない一般人のアカウントでさえ拡散されやすいものです。
原因④過大評価による格差
ユーザーが持つ企業へのイメージと実態の格差もまたレピュテーションリスクとなり得ます。
先ほどの塚田農場を例にとると、「鶏料理メインの居酒屋」というブランディングをしていれば産地が国産であろうがタイ産であろうが評判を落とすことはなかったでしょう。仮に“一部の商品でタイ産のブロイラーを使用している”という表記をしていたとしても、「国産地鶏」というブランディングの先入観があるため、ユーザーは裏切られた気分になるのです。
実態に合わせたイメージ戦略が非常に重要なポイントであることがよくわかります。
原因⑤デマや風評被害
これまでご紹介した4つの原因は、いずれも企業や企業に従事する人に起因するレピュテーションリスクでしたが、第三者によるデマの拡散や、自社が全く関係していない問題から飛び火して風評被害を受ける可能性も否めません。
また、自然災害等による風評被害も社会問題となっており、東日本大震災の影響で東北地方の農作物や食品の買い控えが発生したのは記憶に新しく、今もなお多くの方々が風評被害と戦っておられます。
レピュテーションリスクの対策7つ
事例から学ぶ、レピュテーションリスク対策をご紹介していきます。
- 企業規範・企業規則の周知と定着
- 誠実なサービス・商品・対応を徹底
- 正確な情報を提供
- 労働環境の改善
- 第三者による監視体制を作る
- ソーシャルリスニングを実施
- 外部露出を増やしてブランディングを強化
レピュテーションリスク対策は、SNSやインターネット上だけ対策しておけば良いと勘違いされやすいのですが、SNSなどに投稿されてしまった時点でリスクを抑止できていないことになります。つまり、企業運営の土台となる部分での対策が重要なのです。
すでに何らかの問題が発生したあとの対策はリスクマネジメントの中でもクライシス対策と呼ばれ、違った対策が必要になります。
ここでは、問題が発生する前のレピュテーションリスク対策に重点をおき、リスク発生を最小限を抑えるための対策をご紹介します。
対策①企業規範・企業規則の周知と定着
レピュテーションリスクの発生を下げる対策として優先すべきなのが、企業規範・企業規則の周知と定着の徹底です。
企業規範には、企業が大切にしているモラルだけでなく、企業が運営していくために必要な法律なども含まれます。また、企業規則には、レピュテーションリスクを多く含んでいるSNSのガイドラインなども制定しておきたいところです。
SNSのガイドラインは「ソーシャルメディアガイドライン」や「ソーシャルメディアポリシー」と呼ばれ、SNS上での炎上やトラブルに備えて定める企業が増えてきています。
企業規範・企業規則を制定するだけでは意味がなく、定着させることが重要なポイントです。定期的に周知を行い、Eラーニングや専門家による研修などを実施し、定着を目指していきます。
対策②誠実なサービス・商品・対応を徹底
ユーザーからのクレームや風評被害、デマの拡散を回避するのは、誠実なサービス・商品提供を徹底するに限ります。サービスや商品だけでなく、広告や宣伝コンテンツにおいても、「受け取り手がどう感じるか?」と多角的に検証できる場を設けるように心掛けたいものです。
対ユーザーだけでなく、対クライアントに対しても同様のことが言えます。高圧的な態度をとっていないか、自社・他社の社外秘情報や愚痴を公共の場で口にしていないかなど、従業員一人ひとりが高い意識を保つ仕組み作りも必要でしょう。
対策③正確な情報を提供
企業が何らかの情報を発信する際は、正確な情報を提供するよう気をつけます。カスタマーセンターなどを持つ企業においては特に注意が必要な対策です。
カスタマーセンターで誤った情報を提供してしまった場合、顧客が被った損害を補填するだけにとどまらず、その顧客が自身のSNSアカウント等で誤った情報を拡散してしまうと、企業評価が大幅に低下してしまう可能性もあるでしょう。
また、ユーザーが誤った情報をSNS上で拡散している場合も、正しい情報を速やかに提供したいところです。
対策④労働環境の改善
レピュテーションリスクは、社内の労働環境にも潜んでいます。
先ほどもご紹介した通り、「転職会議」や「OpenWork」といった従業員や過去在籍したことのある人が評価を書き込める会社評価サイトは、誰もが閲覧できるようになっています。「サービス残業が多い」「高圧的な労働環境で鬱になり退職」といったクチコミは企業の評価の低下につながるだけでなく、人材獲得にも影響が出る可能性があるでしょう。
レピュテーションリスク対策は社外にばかり目を向けがちですが、従業員が気持ちよく働ける環境作りも大切なのです。
対策⑤第三者による監視体制を作る
社内だけでレピュテーションリスク対策を実施すると、忖度による見逃しや上層部からの圧力による不正への加担などが発生する可能性があります。
最近ではレピュテーションリスクを監視する業者も増えてきていますので、「社内で対策するのが難しい」という場合は思い切って専門家に委託してみるのも一つでしょう。
対策⑥ソーシャルリスニングを実施
ソーシャルリスニングとは、主にSNS上で繰り広げられている会話やつぶやきを収集・分析し、企業の運営に活用するマーケティング手法の一種です。
SNSが流行する前までのソーシャルリスニングは街頭調査が主流でした。しかし、街頭調査では回答に応じてくれる人に偏りがあり、収集できる情報量にも限りがあるというデメリットがありました。匿名アンケートだとしても実際に人を目の前にすると本当の意見を書きにくいため、信ぴょう性が乏しいのも問題点でした。
対してSNSは、個人の正直な意見を・短時間で・大量に収集できるというメリットがあります。
特定のキーワードについての投稿を自動で収集してくれるツールなどもありますので、うまく活用できれば大幅に時間とコストを削減できます。ソーシャルリスニングを専門とする事業者に委託するのも良いでしょう。
対策⑦外部露出を増やしてブランディングを強化
外部露出を増やしてブランディングを強化するのは、レピュテーションリスクを抑えつつ、同時に売上アップを目指すのに有効な手段です。
SNSやメディアを運営していない企業Aがユーザーからのデマによって風評被害を受けた場合と、SNSやメディアを運営しておりユーザーとの交流が積極的に行われている企業Bが同じく風評被害を受けた場合どちらかが事態を収束しやすいかというと、SNSやメディア運営を行っている企業Bだと言えます。
企業ではありませんが、女優の水川あさみさんと戸田恵梨香さんが絶縁関係であると週刊誌が報じたのに対し、本人が自身のインスタグラムアカウントで真っ向から否定する投稿を実施。スピーディにデマの拡散を食い止めました。
SNS等で社内環境をオープンにし、透明性を高めることは、信頼と評価を上げる結果につながります。
レピュテーションリスク対策の依頼先
レピュテーションリスク対策を自社内で行わず、専門家に依頼する企業が増えています。
一見するとコストが高くなるように思われがちですが、レピュテーションリスク対策に人員を配置し、専門的な知識がない手探り状態で業務を進めるより、最初から経験豊富な専門家に任せてしまった方がコストパフォーマンス的にもメリットが高いのです。
デメリットとしては、「事業内容がニッチである」「事業内容やブランディングに独自の細かなルールがある」といった場合、自社の商品やルールを理解してもらえるまでに時間がかかるといった点があげられるでしょう。どういった内容まで踏み込んで依頼するかといった線引きや、スムーズに情報を共有し合える工夫で乗り切っていきます。
レピュテーションリスク対策の依頼先は大きく分けて「Webマーケティング会社」か「弁護士事務所」の2つあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
Webマーケティング会社
SEO対策やSNS運営といったマーケティングの実務を依頼したい場合は、Webマーケティング会社となります。
レピュテーションリスク対策を専門に行っている事業者は少なく、風評被害対策や誹謗中傷対策の中にレピュテーション対策を盛り込んでいく形が主流です。
- 自社サイトやオウンドメディア、SNS運営を強化したい
- ネガティブワードの押し下げ(逆SEO対策)を依頼したい
- サジェスト汚染を改善したい
※サジェスト汚染…検索エンジンの窓にネガティブなキーワードが予測で出てしまうこと
このような悩みを持つ方は、Webマーケティング会社に依頼するのがおすすめです。
弊社BLITZ Marketingは、風評被害や誹謗中傷被害の対策に強みを持つマーケティング会社で、レピュテーションリスクについてもサポートが可能です。ご相談は何度でも無料で、予算に応じたご提案をさせていただきます。お気軽にご相談ください。
弁護士事務所
誹謗中傷や風評被害を受けないための法的な対策やリテラシー、被害発生後の対策について依頼したい場合は弁護士事務所となります。法的な措置や手続きが踏めるという強みがあります。
マーケティング会社と同様、レピュテーションリスク対策を専門とする事務所は少なく、風評被害対策の一貫として内容に盛り込まれることが一般的です。
- ソーシャルメディアガイドラインを作成したい
- 社内研修をお願いしたい
- 業務内に潜むレピュテーションリスクの発見を依頼したい
- すでに発生している風評被害に法的な手続きを依頼したい
このようなお悩みをお持ちの方は弁護士事務所にご相談されることをおすすめします。
【まとめ】レピュテーションリスク対策は事例から学ぼう
レピュテーションリスクは時代の流れによって日々変化し続けます。企業で発生した問題を他人事と思わず、自社でも起こり得る可能性があると考え、学んでいく姿勢が重要です。
風評被害が出ないよう、また、被害を最小限に食い止められるよう、対策を打っていきましょう。
レピュテーションリスクや対策
参考記事:レピュテーションリスクとは?過去の事例からわかる損失と4つの対策|株式会社パラダイムシフ
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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