近年多くのVTuber(バーチャルYouTuber)が登場して人気が高まっていく反面、アンチによるインターネット上での誹謗中傷や暴言が問題視されています。
顔出しをせずアバターで活動しているVTuberは悪意を持った攻撃の標的となりやすいため、精神的に追い詰められて引退してしまう人も少なくありません。
この記事では、そんなVTuberに対する誹謗中傷について解説します。
罪となる暴言や実際に誹謗中傷を受けた時の対策、有名VTuberへの誹謗中傷に関する最近の事例も説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
VTuberへの誹謗中傷は犯罪?
「顔出しをせずアバターで活動している“VTuber”は、実在の人間ではないから何を言っても罪にはならないだろう」
VTuberをアニメやゲームなどの“架空のキャラクター”として捉えていることから、軽い気持ちで誹謗中傷や暴言をネット投稿する人は意外に多いようです。
ではこれらの状況を踏まえて、「実際に罪になるのか」を具体的に説明していきます。
「中の人」への権利侵害になるかどうか
アバターであるVtuberへの誹謗中傷が罪として認められるかどうかは、「同定可能性」が必要となります。
同定可能性とは、誹謗中傷が誰に向けて言っているのか明らかに分かる状況であること。
つまりVtuberの場合、「中の人」に対する名誉毀損や侮辱罪などの権利侵害が認められるかがポイントとなります。
逆に言えば、見た目などの「アバター」への非難と判断されれば、罪に問われないケースもあるというわけです。
ただし、Vtuber事務所に所属する企業勢Vtuberの場合は、少し状況が変わってきます。
もし権利侵害が認められなくても、会社が営業妨害だと主張すれば「会社に対する威力業務妨害」として犯罪扱いとなる可能性も充分にあるでしょう。
名誉毀損や侮辱罪になる言葉
名誉毀損や侮辱罪になる言葉の例としては、「前科がある」「風俗で働いていた」「不倫をしている」などが挙げられます。
詳しく説明すると、「中の人」の自尊心を傷つける行為である「名誉感情の侵害」が認められる言葉です。
これは「中の人」の身バレや、以前行なっていた芸能活動等のいわゆる「前世」が知られることで起こりやすいのが特徴。
知人のリークによって「中の人」の顔写真が流出するなどして、肖像権侵害やプライバシーの侵害にも発展しやすいです。
アンチは意外と身近な人物であることも多いため、このように「中の人」の社会的評価を低下させるような誹謗中傷が起こる例は珍しくありません。
キャラクターの著作権侵害
Vtuberの「キャラクター」には著作権が存在するため、勝手に改変を加えてネット上に公開する行為は「著作権侵害」となります。
もしVtuber事務所に所属する企業勢Vtuberの「キャラクター」に対して、誹謗中傷や侮辱を伴うような改変をして公開すれば、著作権侵害にあわせて「会社に対する威力業務妨害」となる可能性が高いでしょう。
したがって、場合によっては言葉による誹謗中傷よりも、イラスト・画像・写真による誹謗中傷の方が罪が重くなることも考えられます。
VTuberが誹謗中傷された時の対策方法
ここでは、VTuberが誹謗中傷された時の対策方法を説明します。
状況にあわせて解説しているので、適切な対策を探す時の参考にしてみてください。
対策① 犯罪行為に該当する場合
悪質な誹謗中傷と暴言により、明らかに犯罪行為だと判断できる場合の対策方法を2種類紹介します。
被害届の提出や刑事告訴
VTuberに危害を加えようとする脅迫や参加予定のライブへの爆破予告など、身の危険を感じる内容であれば、警察に被害届を提出してください。
この場合、実際に業務や営業に支障が出ていることも多いでしょう。
「誹謗中傷罪」という犯罪はないため、誹謗中傷の内容や状況に応じて、どの犯罪行為にあてはまるのかを検討してみてください。
また、犯人に処罰を強く求めるのであれば、刑事告訴を行なうことも必要です。
刑事裁判で有罪判決が出ると、加害者には罰則(刑事罰)が科されるため、今後の抑止力にもなります。
▼罰則(刑事罰)
<名誉毀損罪>3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
<侮辱罪>拘留、または科料(1,000円以上1万円以下の罰金)
<脅迫罪>2年以下の懲役、または30万円以下の罰金
<信用毀損及び業務妨害>3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
開示請求による特定と損害賠償請求
民事事件として損害賠償請求をしたいのであれば、「発信者情報開示請求」を弁護士に依頼して、法的手続きによって犯人を特定します。
誹謗中傷は、刑事上の問題(名誉毀損罪、侮辱罪など)と民事上の問題(損害賠償請求など)の両面を持っているのが特徴。
警察は原則として民事事件には介入しないため、業務妨害を理由とした損害賠償請求を優先するのなら、自分で犯人を特定する必要があります。
刑事告訴と開示請求を同時に行なうか、どちらかのみにするかは、犯人への処罰をどこまで望むかによって検討しましょう。
【損害賠償請求までの簡単な流れ】
①情報流通プラットフォーム対処法に基づいて、コンテンツプロバイダ(掲示板やSNSを提供する事業者)に発信者情報(IPアドレスなど)の開示を請求。
②IPアドレスなどをもとに、アクセスプロバイダ(インターネット接続サービスを提供する事業者)に発信者情報(氏名・住所)の開示を請求。
※各プロバイダが開示に応じない場合は、裁判所へ発信者情報開示命令の申立て(仮処分・訴訟の提起)を行なう。
③発信者を特定。
④発信者に直接損害賠償を請求(示談)、もしくは民事裁判(民事訴訟)で損害賠償を請求する。
対策② 誹謗中傷の投稿を削除したい場合
犯罪行為とまではいかない程度の誹謗中傷で、目立つ投稿を削除したい場合の対策方法を3種類紹介します。
プラットフォームに削除申請をする
動画サイトや掲示板など、Vtuberへの誹謗中傷が投稿される場所はさまざまです。
もし削除したい投稿があれば、各プラットフォームに削除申請を行ないましょう。
大抵の場合は、お問い合せフォームから削除依頼ができるようになっていることが殆どです。
誹謗中傷が書き込まれやすいプラットフォームでは、削除申請フォームが用意されていることも珍しくありません。
また、個人ブログやSNSなどであれば、本人に直接削除を依頼して警告することも大切。
放置すればVtuberへの誹謗中傷が今後も続くだけでなく、悪化していく可能性も高いので、早めに対処しておきましょう。
プラットフォームの種類 | 名称 |
動画サイト | YouTube |
掲示板サイト | 5ちゃんねる(旧:2ちゃんねる) 爆サイ.com ガールズちゃんねる 雑談たぬき |
ブログサイト | はてなブログ アメーバブログ(アメブロ) ライブドアブログ |
SNS | X(旧:Twitter) TikTok |
質問・相談系サイト | Yahoo!知恵袋 発言小町 教えて!goo |
▼誹謗中傷のチェックについては、こちらで解説しています。
ネットの誹謗中傷を検索してチェック!対処法も解説
送信防止措置を依頼する
誹謗中傷を書き込んだ本人、もしくはプラットフォームの運営会社が削除依頼に応じてくれない場合は、権利侵害(プライバシー権侵害、名誉毀損等)を理由とする「送信防止措置」を依頼します。
送信防止措置とは、「ネット上に存在するコンテンツ内容によって誰がどのような法的侵害を受けているのか」を、法的に定められている書式で申告する手続きのことです。
これにより、依頼された相手は「情報流通プラットフォーム対処法(旧:プロバイダ責任制限法)」に基づいて対応を行なう必要があるため、削除してもらえる可能性が高くなります。
ただし、送信防止措置依頼は削除したい内容について法的主張を記入する必要があるので、弁護士に代理を依頼するのが良いでしょう。
▼誹謗中傷対策が可能な弁護士法人については、こちらをチェック!
ネット上の誹謗中傷対策を弁護士に依頼すべきケースは?おすすめ弁護士法人3選
裁判所へ仮処分命令を求める
送信防止措置を依頼しても削除に応じてもらえない場合は、弁護士に依頼して裁判所に仮処分命令を申立てましょう。
仮処分命令の申立てが認められれば、誹謗中傷を書き込んだ本人もしくはプラットフォームの運営会社に対して、裁判所が直接削除を命じます。
ちなみに通常の訴訟では、訴訟提起から判決が出るまでに半年~1年ほどかかります。
しかしこの仮処分だと、早ければ数週間で命令が出るのがポイント。
送信防止措置依頼を行わずに仮処分命令の申立てを行なうことも可能なので、迅速に解決したい時は最初からこちらを選択するのも良いでしょう。
▼弁護士の依頼費用については、こちらをチェック!
【徹底解説】ネット上の誹謗中傷対策を弁護士へ依頼する費用は?
有名VTuberへの誹謗中傷に関する最近の事例
有名VTuberへの誹謗中傷に関する最近の事例としては、ANYCOLOR株式会社(にじさんじ)に所属する甲斐田晴さんの件が挙げられます。
2024年6月、ANYCOLOR株式会社では甲斐田晴さんを中心とした所属ライバーに対する以下の各投稿について、以前より法的措置を行っていたことを公表しました。
①YouTubeでのライブ配信を妨害する意図で、短時間で執拗にコメントを連投するいわゆる「荒らし行為」
②SNSサービス「X」上で、「甲斐田晴」を含む当社及び当社所属ライバーに関連するハッシュタグを付し、又は当社所属ライバーのビジュアルを利用した画像や動画を無断で添付したうえで、他人を不快にさせるグロテスクな画像等を多数連投するいわゆる「タグ荒らし行為」
③当社主催のライブイベントに参加した当社所属ライバーに対する危害予告
引用元:ANYCOLOR株式会社公式サイト|当社所属ライバー「甲斐田晴」に対する 極めて悪質な誹謗中傷行為・荒らし行為等への対応について
また、これらの投稿を行ったアカウントについて発信者情報開示請求訴訟を提起したところ、それぞれ発信者の情報が開示されて同一人物であると判明したことも発表されました。
その後の2024年12月には、この人物に対して刑事的な責任を追及していく旨を報告。業務妨害罪を根拠として、東京地方検察庁へ書類送検されたことも明かされました。
更には、この件を含めて遂行している法的手続が複数存在することが公表され、VTuberへの誹謗中傷に対する徹底した対応を行なう姿勢を見せています。
VTuberが誹謗中傷によって精神的な苦痛を受け、活動を続けることができなくなるケースは非常に多いため、このように早急な対策をとるVTuber事務所が今後も増えていくでしょう。
▼Vtuber事務所(Vtuber運営会社)については、こちらをチェック!
Vtuber運営会社とは?主な大手企業と所属Vtuberも紹介
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【まとめ】Vtuberへの誹謗中傷対策は法的措置が一番
VTuberが誹謗中傷や暴言の被害に遭いやすい現在では、開示請求や刑事告訴などの法的措置が一番の対策方法と言えます。
これは、同じ人物が再び同じことをしないようにするためだけでなく、同じようなことをする人を増やさないための抑止力となるのがポイント。
VTuber事務所であれば、所属VTuberを守るためにも速やかに対処したいところです。
個人勢VTuberであっても、まずは被害届を出したり、弁護士に相談したりして、決して放置しないことが重要。
依頼費用などで掛かった費用は加害者に請求することも可能なので、一人で悩まずに専門家に相談してみてください。
投稿者プロフィール

- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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