ネットでの誹謗中傷やいじめ、最近では新型コロナウイルスが原因の誹謗中傷事案も多く発生しています。場合によっては誹謗中傷を行った人物に対して慰謝料や損害賠償を求めることができますので泣き寝入りすることなく、然るべき対応を取りましょう。
慰謝料や損害賠償を求める第一歩として、誰が書き込みを行ったか特定する必要があります。書き込みを行った人物が特定できないと次のステップに進むことは難しいので、ここでは誹謗中傷を行った人物を特定する方法を解説します。
本記事で分かること
- 誹謗中傷した犯人を特定する方法
- 誹謗中傷した犯人を特定する際にかかる弁護士費用
- 誹謗中傷した犯人を特定した事例
目次
誹謗中傷した犯人を特定する方法
誹謗中傷した犯人を特定する前に、まずは悪質な内容の投稿を見つけたら積極的に証拠を残しましょう。
- 該当するページの内容とURL、日付が表示される状態で印刷しておく(PDFでも可)
- 誹謗中傷発言に至る流れがわかるよう、全体の流れも記録しておく
例えばTwitterだと、誹謗中傷投稿にはそこに至るまでの発言者のツイートや、それに関連する批判ツイートなど、一連の流れがあるはずです。何故この発言が名誉棄損となるかの根拠を示すためにも、一部分だけの記録を残すのではなく全体の流れを残しておくことが大切です。
証拠を持って弁護士へ相談を
これらの証拠を持ってまずは弁護士に相談へ行きましょう。誹謗中傷を行ってきた人物を特定することができるか、慰謝料請求ができるのかをプロの目で判断してもらうためです。
削除請求を行う
誹謗中傷を受けた場合は、サイト上にあるお問い合わせフォームやメールを通じて、掲載情報の停止、削除依頼が可能です。しかし、削除依頼に応じてもらえない場合は、裁判所での法的手続きを利用することとなります。
発信者情報開示請求を行う
削除請求よりもより効力を持っているのが、「発信者情報開示請求」です。これにより、投稿者を特定し、謝罪および今後一切誹謗中傷を行わないときちんと約束させることが良策と言えるでしょう。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で個人や企業・団体などに対して誹謗中傷を行った人物を特定するための手続きを指します。プロバイダに対して、これらの発信者情報の開示を求めることができます。
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- Pアドレスとポート番号
- インターネット接続サービス利用者識別符号(i-mode IDなど)
- SIMカード識別番号
- タイムスタンプ
これまで投稿者特定のために、最低2回の裁判が必要とされていました。しかし、2020年8月に新たに電話番号が追加されたことによりコンテンツプロバイダから電話番号が開示されれば、弁護士会照会という調査手段で住所や氏名が判明するため、1回の裁判で済む可能性があります。これにより、解決までの時間が短縮され、被害者の精神的負担が軽減されることが期待されています。
その他にも、IPアドレスだけでは特定に至らなかったケースでも、特定に至ることがあるなど、発信者情報開示に電話番号が追加されたことで多くのメリットが予想されます。
発信者情報開示請求の方法
- サイト管理者に投稿に利用されたIPアドレス等の開示を求める
- 情報の開示(非開示の場合は法的手続きを取る)
- 開示されたIP情報からプロバイダを特定
- プロバイダに対して該当するIPを利用した人物の契約者情報の開示を求める
- 情報の開示(非開示の場合は法的手続きを取る)
これらは通常、仮処分申請を行ってから開示に至るまで、数ヶ月〜半年程度かかると言われています。
発信者情報開示請求を行うメリット
投稿者を特定することで、訴訟を起こすのではなく、示談交渉など直接やり取りすることが可能になります。示談交渉を行なってもなお、応じてもらえない場合は、投稿者に対する損害賠償請求あるいは刑事告訴などの法的措置をとることになります。
また、もう一つのメリットとしては、投稿者を特定することにより、誹謗中傷投稿が繰り返されることがなくなり、再発を防ぐことができます。
場合によっては誹謗中傷と認められないことも
これだけ時間と労力を使っても、場合によっては残念ながらインターネット上に投稿された誹謗中傷でも、その内容が違法だと認められないこともあります。発信者情報開示の仮処分が認められるためには、以下の要件が満たされなければなりません。
- 被保全権利
- 保全の必要性の要件を満たさなければならないこと
これらの条件に満たない場合は相手の特定は不可能であり、さらに書き込みを削除する事も難しいでしょう。その場合は、書き込まれてしまった投稿に対して、削除以外の方法で対処しなければなりません。
個人で解決を目指すよりも弁護士へ相談を
これらの手続きは個人で行うことも可能です。しかし、誹謗中傷問題ではスピード感が非常に重要、かつ手順が複雑、そして法律の知識が必要であることや、裁判となる可能性があると考えると弁護士へ依頼することをおすすめします。
弁護士へ任せることで安心することもできますし、精神的なストレスも軽減されます。
プロバイダ責任制限法改正でより迅速な対応が可能に
先ほど手順として説明した「発信者情報開示請求」ですが、最近プロバイダ責任制限法改正の動きが進められています。
これは、ネットでの中傷被害の救済を迅速化するため1回の裁判手続きで投稿者情報を開示できる制度の新設などを盛り込んだ最終報告書案を取りまとめていたことがわかりました。
インターネット上のSNSや掲示板などに誹謗中傷や名誉毀損的な書き込みがされた場合、被害者側は厳格な要件のもと数回の裁判所手続きを経てようやく本人を特定することができます。これは投稿者側の表現の自由などの権利保護も考慮されていることが理由となっています。
しかし近年ネット上での誹謗中傷被害は増加しており、それにより芸能人が自ら命を落としてしまうという事例も発生しています。また事実無根の書き込み一つで売上が激減したり顧客との取引が中断し、また金融機関での取り付け騒ぎに発展することもありえます。
そこで誹謗中傷を行った人物を特定するために、必要な発信者情報開示請求をより簡易・迅速にネット中傷による被害救済を図る制度の創設が検討され、2021年中にも成立する見通しとされます。インターネットやSNS上での誹謗中傷対抗策としては現状どのようなことができるのか、また将来どのように変更されていくのかを注視して準備しておくことが重要と言えるでしょう。
誹謗中傷を行なった人物を特定後の対応は
誹謗中傷を行った人物が特定できた場合、次の対応としては以下の2パターンが考えられます。
- 示談交渉
- 慰謝料や損害賠償を求めるために裁判を起こす
一般的には、示談交渉を行う場合が多いようですが仮に示談交渉が破綻となった場合は、弁護士と共に損害賠償請求をするための裁判を起こしましょう。損害賠償請求するための裁判を行い、被害者の主張を裁判所が認めた場合、SNSで誹謗中傷してきた相手から被害者に対して損害賠償金が支払われます。
誹謗中傷した犯人を特定した事例
埼玉県熊谷市で2009年に発生した小学4年の男児が死亡した未解決のひき逃げ事件。
自動車運転過失致死罪の時効が4カ月後に迫っていた頃、事件の情報提供用に公開している母親のメールアドレスに突然、「ごめんなさい」と謝罪のメールが届いた。それ以外に文章はなく、並んでいるのはたった6文字。約1週間後、同じ差出人から届いたメールは「捕まえてみろ~。ば~か」と犯人を装うかのような内容だった。
犯人を装うメールはその後、北陸地方に住む30代男性が送信した虚偽のものだと分かり、男性は、軽犯罪法違反容疑で書類送検され、不起訴処分となった。
舌がんの手術を受けたタレントHさん。前日に自身のブログのコメント欄に「死ね消えろ馬鹿みたい」と書き込まれ、食道がんの術後以降には「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ 次はどんな病気?(笑)」「死ねば良かったのに」などと数ヶ月にわたって何度も誹謗中傷のコメントが投稿されました。
これを受けて関係者は警視庁に被害届を提出。誹謗中傷のコメントを書き込んだ北海道在住の50代主婦が脅迫容疑で書類送検されました。
誹謗中傷した犯人を特定する際にかかる弁護士費用
弁護士に依頼するとなると気になるのが、弁護士費用です。
弁護士費用には大きく分けて以下の3つに分けられます。契約内容によって費用の名目は異なりますが、一般的な表現として弁護士費用というと、この3つがあげられます。具体的な金額は近くの弁護士事務所に問い合わせを行いましょう。
- 着手金(契約時に発生する費用)
- 報酬金(成功した際に発生する費用)
- 実費(交通費や郵便代など実際にかかった費用)
それでも金銭的に厳しいという場合は、法テラスの利用も検討してみましょう。
法テラスとは
条件を満たしていれば、法テラスが着手金や報奨金などの、弁護士に支払う費用を立て替えてくれます。立て替えてもらった費用は分割で法テラスに返済する必要がありますが、一括でお金を用意する必要がなくなるため、費用の捻出がネックになっている方には非常に役立つ制度です。
まとめ
誹謗中傷を行った人物の特定方法について解説しました。簡単にポイントをまとめておきます。
本記事のポイント
- 誹謗中傷を受けたらまずは証拠を保存
- 個人で犯人を特定するような行為は行わない
- 証拠が揃ったら弁護士へ相談
- 発信者情報開示請求を行う
- 誹謗中傷を行った人物が特定できれば示談交渉を
- 場合によっては発信者情報開示請求が認められない可能性も
今回は誹謗中傷を行った人物を特定するためには、どのような手順で実施するべきか解説しました。自分自身でも手続きを行うことは可能ですが、最終的には示談や慰謝料請求など弁護士の力が必要となるケースが多いです。無理をせずに弁護士へ相談することがオススメですが、まずは気軽に誰かに相談したいという場合には弊社の問い合わせもご活用ください。
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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