インターネット上における誹謗中傷が社会的な問題になっています。誹謗中傷による痛ましい事件などが頻発していることからも、世論はもちろん、国会でもインターネット上の誹謗中傷行為に対する規制を強化するための法整備が進められつつあります。
ネット上での誹謗中傷は多くの被害者を生みますが、一方で多くの誹謗中傷者が過去に逮捕されています。今回は、インターネット上の誹謗中傷により逮捕者が出た案件や、刑事告訴された場合に問われる罪・負うべき責任などについて解説していきたいと思います。
本記事により分かること
- ネット上の誹謗中傷で逮捕者が出た過去の案件とは?
- ネット上の誹謗中傷行為による刑事告訴で問われる罪とは?
- ネット上の誹謗中傷で逮捕以外でなされる責任追及とは?
- ネット誹謗中傷に対して、人々が考えていかなければならないこととは?
インターネットやSNSは上手に使えば、人生を充実させてくれるツールです。誹謗中傷について深く知り、自らを守るためにぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
ネット上の誹謗中傷における逮捕者が出た案件は?
ネット上の誹謗中傷より逮捕者が出る案件は過去にいくつも起きています。ここでは社会的に注目を集めた案件について簡単にご紹介します。
スマイリーキクチさん誹謗中傷事件
お笑いタレントのスマイリーキクチさんは、1989年に起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人であるとインターネット上にデマを流され、10年以上に渡り誹謗中傷の被害に遭いました。この事件は10年以上という長い時間をかけて多くの人がデマを拡散し、被害を広げてきたという点に特徴があります。
最終的には2009年に19人もの誹謗中傷者が警察に一斉摘発されており、その後一部は起訴猶予処分、一部は不起訴処分が正式に決定しています。
川崎希さん誹謗中傷事件
元AKB48のメンバーでタレントとしても知られる川崎希さんは、インターネット上で受けた誹謗中傷に対し、民事と刑事の両面から責任追及をすることを2019年に表明し注目されました。川崎希さんは自身の妊娠・出産についてのSNS投稿に対しての誹謗中傷や、SNS上に自宅の住所を晒されるなどの被害に遭っていました。
こうした被害に対し、発信者情報開示請求を通して書き込んだ女性2人が特定され逮捕されるに至りました。その後女性2人が反省を見せたことから刑事告訴は取り下げられる形で収束しています。
こうした誹謗中傷による逮捕はほんの一部であり、顕在化されていない誹謗中傷被害に悩む人はあとを絶ちません。また注目されやすいのは芸能人や有名人に対する誹謗中傷ですが、一般人への誹謗中傷も問題になっており、有名・無名に関わらず逮捕案件は増えてきています。
ネット上での誹謗中傷行為による逮捕・どんな罪に問われる?
インターネット上での誹謗中傷行為により逮捕されると、どんな罪に問われることになるのでしょうか?具体的に見てみましょう。
名誉毀損罪
ネット上に誹謗中傷にあたる投稿を行うことで、名誉毀損罪に問われる可能性があります。名誉毀損罪は以下のように定められています。
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法230条
名誉毀損罪のポイントは「公然と事実と摘示」という点にありますが、誹謗中傷で示された事実が嘘・真実どちらであったとしてもそれにより「社会的に貶められた」と判断される場合には名誉毀損罪が該当する可能性があります。
侮辱罪
侮辱罪は名誉毀損罪とは異なり、事実の摘示の有無に関わらず問われる可能性がある罪です。
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用:刑法231条
「バカ」「ブス」など事実ではない投稿などで社会的評価が貶められたと判断される場合は侮辱罪が問われる可能性があります。言葉そのもので相手を傷つけるという点に、名誉毀損罪との違いがあります。
信用毀損罪
信用毀損罪は以下のように定められています。
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法233条
信用毀損罪は、嘘の情報により第三者からの信用や社会的な評価が下げられた場合に問われる可能性がある罪です。一方で、嘘ではなく真実による場合は信用毀損罪には問われませんが、名誉毀損が該当する可能性があります。
この他にも、内容によっては脅迫罪や業務妨害罪が該当する場合もあります。
ネット上での誹謗中傷行為による逮捕以外の責任追及
ネット上での誹謗中傷行為は、逮捕以外にも責任追及されます。
投稿削除
誹謗中傷にあたる投稿は削除することが求められます。SNSや掲示板などへの投稿は、被害者や第三者からの削除依頼は対応されないことが多く、相手から直接投稿を削除するように求められることがあります。
投稿者が特定できない場合には、裁判所を通して発信者情報開示請求の手続きが取られ、投稿削除が求められることもあります。
損害賠償請求
誹謗中傷により社会的評価を下げられたなどとして、慰謝料などの損害賠償が請求されることがあります。損害賠償請求は裁判を通してなされることもありますし、個人間で書面を通して行われることもあります。
誹謗中傷による慰謝料の相場については次の記事で解説しています。
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ネット上の誹謗中傷に対して考えなければならないこととは?
ネット上の誹謗中傷行為に対しての問題意識は広がってきているものの、誹謗中傷自体がなかなか減らないことも事実です。私たちはネット誹謗中傷について、今後どのように考えていかなければならないのでしょうか。
ネット上の誹謗中傷は消えずに残る
ネット上に誹謗中傷投稿をされることにより被害に遭う人がいる一方で、軽はずみな気持ちで誹謗中傷投稿を行い後悔の念に駆られている人、いつ自分が逮捕されるのかという恐怖に襲われている人たちがいることも事実です。
インターネット上に一度残してしまった誹謗中傷は、その投稿を表面上削除したとしても消えません。運営元でデータが保存されている可能性がありますし、誰かがスクリーンショットとして残している可能性があるからです。
ネット誹謗中傷の被害者・加害者双方へ手を差し伸べる必要がある
人を傷つける誹謗中傷を投稿してしまう、人を傷つけることでストレスを発散するなど、こうした行為は現代社会の病であるとも言えます。誹謗中傷被害に遭い心を痛める人たちを救わなければならない一方で、人を傷つける行為を行ってしまう人たちの心の闇についても私たちは考えなければならないでしょう。
まとめ・ネット上の誹謗中傷はますます規制が強まり今後逮捕される可能性が高くなる
インターネット上での誹謗中傷における過去の逮捕事例や問われる罪、これからのネット誹謗中傷に対する考え方について解説しました。簡単にポイントをまとめておきます。
本記事のポイント
- ネット上の過去の誹謗中傷では、スマイリーキクチさん、川崎希さんへの誹謗中傷者の逮捕がよく知られている
- ネット上の誹謗中傷行為で逮捕されると、名誉毀損罪・侮辱罪・信用毀損罪などに問われる可能性がある
- ネット上での誹謗中傷行為は、逮捕以外にも投稿した誹謗中傷の削除、慰謝料などの損害賠償を請求される可能性がある
- ネット誹謗中傷は、被害者を救う必要があると同時に、誹謗中傷を行う加害者の心の闇についても考えていく必要がある
これからインターネット上の誹謗中傷に対する規制はますます強まっていくと思われます。ネットに触れる上での人としての心の持ち方がますます問われていきます。
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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