会社や個人を誹謗中傷・風評する記事は放置すると被害が拡大します。これらの記事を削除する方法はあるのでしょうか?
実は誹謗中傷されている記事を削除することは可能です。ここでは、自分自身で行なう方法と弁護士に依頼する方法について解説します。
この記事を読めば売上やブランドイメージに影響する悪評記事の削除方法を知ることができます。
誹謗中傷記事によって損失は甚大
誹謗中傷記事が量産されていると気になるものですが、どれほど影響があるのかご存知でしょうか?
「ネット上で起きたものぐらい」と思っているようでは危険です!実際に売上や実績に大きな被害が出てしまった例をご紹介します。
①ユナイテッド航空はネット炎上で10億ドル以上を損失
2017年4月にケンタッキー州ルイビルへ向けて出発予定のユナイテッド航空3411便である事件が発生しました。なんと、乗客が座席から暴力的に引きずり出されてしまったのです。
この様子はネット上に投稿されて拡散してしまいました。引きずり降ろされたのは男性の医師であり、引っ張られた際にひじ掛けに倒れて顔に怪我をしています。
この件をきっかけにユナイテッド航空の株価は急落して、2日の間に企業価値10億ドル以上のマイナスが生まれました。投資の神様として慕われているウォーレン・バフェットはこのユナイテッド航空の株価急落によって2,400万ドルを失いました。
②某インターネットショップの売上が大幅ダウン
某インターネットショップは集客マーケティングが成功したことで利益が拡大し、年商数億円にまで成長を遂げました。
そんな時「店舗名」「商品名」を検索すると上位に誹謗中傷記事が目立ち始めます。内容はすべて事実とは異なるものの、お客様には大きなイメージダウンを与えてしまいました。結果的に売上は前年比に比べ約70%も低下してしまいます。
後に詳しく調査した結果、ライバル会社による故意的な誹謗中傷であったことが判明しました。
③ベンチャー企業の採用率が著しく低下
某ベンチャー企業は退職した社員が人気口コミサイトに悪質な書き込みをしたため炎上しました。投稿内容は検索すると上位表示されるため、多くの学生が目にするカタチとなりました。
当然ながら就職内定者や面接希望者は不信を抱くことにより、内定辞退や面接辞退という行動を取ります。最終的に予定していた採用率を大きく下回る結果になってしまいました。
誹謗中傷された記事を自分で削除する方法はある
誹謗中傷記事の影響で売上や採用に大きな打撃を与えることがわかりました。できる限り悪質な記事は早期に削除してしまいましょう。
実は自分一人でも記事の削除をすることができます。その方法をひとつずつ解説していきます。
①プロバイダ責任制限法を活用してみる
誹謗中傷・風評が最も行われやすいのは掲示板や口コミサイトです。誰もが匿名で書き込める上に、大勢が閲覧していることもあり、被害の拡大にもつながりやすく非常に厄介な存在です。
プライバシーや人格権の侵害が当たり前のようにされているので、ある法律が登場しました。一般に「プロバイダ責任制限法」と呼ばれているものです。
プロバイダって何?
インターネットを接続するためのサービスを提供している会社を指します。「NURO」「BBエキサイト」「So-net」「OCN」「BIGLOBE」などがメジャーです。
インターネットとプロバイダは密接関係にあり、ネット上の書き込み等にも一定の責任が発生します。「プロバイダ責任制限法」によって人権侵害が認められる場合には“送信防止措置”を求められるようになりました。
具体的にはプロバイダの裁量で任意に悪質な書き込みやサイト自体を表示させないようにすることができます。
送信防止措置の流れを解説
ネット上で誹謗中傷をされている時は以下のような構図であるケースが多いです。
まずは送信防止措置を依頼する対象を決めなくてはいけません。
対象はコレ!
- Webサーバー管理会社
- レンタル掲示板管理会社
- 管理人(サイト運営者)
- 発信者
基本的に掲示板や口コミサイトは匿名であるため「発信者」の素性が明かされているケースはほぼありません。よって「Webサーバー管理会社」「レンタル掲示板管理会社」「管理人」に送信防止を求めることが多いです。
Webサーバーへの依頼方法
サーバーの管理権限を持つ人物や会社が誰なのかを最初に特定する必要があります。
しかし、なかなか情報は開示されていないので、プロバイダを特定しましょう。ドメイン名の登録情報を公開している「whois検索」というサービスが重宝しますのでおすすめです。
①まずは調べたいサイトのURLを検索します。
② 「Registrar」を確認する。
③「削除申し立て」の書類やメールを送ります。
この画像ではプロバイダが「GMO」と判明したので、そちらに問い合わせます。
※「GMOグループ」は書面での受付です
書面のサンプル
メールや問い合わせフォームでのサンプル
問い合わせ先により必要書類が異なる場合もあります。
基本的には「削除申し立てを行ないたいこと」「削除する内容(URL、誹謗中傷の内容、削除理由)」「スクリーンショットなどの証拠」が必要です。
④プロバイダの独自判断で削除、あるいは管理者へ問い合わせを行ない削除がされます。
掲示板への依頼方法
メジャーな掲示板には「削除依頼フォーム」「削除依頼のメールアドレス」が公開されています。
①送信先を見つけ出す。
②メールで削除依頼を行なう。
こちらの内容もプロバイダ宛てに送る文面と同じで構いません。必要なデータや証拠は準備しておきましょう。
③管理者が削除に応じれば該当する投稿が消えます。
②DMCAという法律を用いて削除依頼
DMCAの正式名称は「デジタルミレニアム著作権法」と言います。文字通り著作権を守るための法律です。そのため著作権侵害を行なっているサイトや書き込みのみ削除できます。
例えば無断で画像が掲載されていたり、文章がそのままコピペで貼られているなどが対象です。審査基準は厳しめで明らかに著作物の盗用や著作物への誹謗中傷がされていたりしないと成立しません。
削除依頼の申請はシンプルですので活用できるなら試してみましょう。
DMCA方法クレームの方法
③サジェスト・関連キーワードの削除方法
検索画面に入力した際に予測で出るものを「サジェスト」といいます。
便利ではあるのですが、ここにネガティブなキーワードが表示されてしまうこともあります。
「〇✖会社 ブラック」「〇✖会社 パワハラ」などです。
また検索結果ページ下部に表示される「関連ワード」も厄介です。別名は「虫眼鏡」と呼ばれます。
ここもネガティブワードが存在するだけマイナスイメージを与え兼ねません。
記事や投稿の削除だけではなく、このような細かい部分も削除する必要があります。
サジェスト・関連キーワードの削除方法
不適切な検索候補の報告
①サジェストの右下にある「不適切な検索候補の報告」をクリックする。
②「不適切とされる検索候補はどれですか?」と問われるので該当するものをチェックする。
③チェックを入れて送信ボタンを押して完了。
法的リクエスト
①「法律に基づく削除に関する他の問題を報告する」というページを開く
②必要事項を記入して、権利侵害の証拠となる画像を添付して送信する。
※原則的に人権侵害や名誉棄損といった法律的な問題が対象
③およそ1ヶ月半以内に権利侵害が確認できればサジェストに表示されなくなります。
誹謗中傷記事の削除は弁護士に頼む方法もアリ
誹謗中傷記事の削除はご自身でも可能であることはご理解いただけたはずです。
しかし、時間がなかなか取れない人には手続き等が面倒なものに感じるでしょう。その場合は弁護士に頼むという方法もあります。具体的に弁護士がどのような動きをするのかを確認しましょう。
①制作者本人に削除請求する
記事を書いた人物や投稿した人物を特定できているのであれば、弁護士が直接削除するようにコンタクトを取ります。相手側は弁護士からの連絡であると事の重大さを理解しやすいので、削除に応じるケースも少なくありません。
しかし、弁護士は強く出ることもあるので、逆に癇に障り誹謗中傷が過激化する恐れもあります。
【相場】
着手金:0円
報酬金:5万円
②運営会社や管理者に連絡をする
大手掲示板や口コミサイトには運営会社や管理者が存在します。そちらに対しても削除を促します。問い合わせフォームやメールアドレスを経由して行なうので、ご自身でできる範囲を代わりにやってくれるというイメージです。
【相場】
着手金:0円
報酬金:5万円
③サーバー管理者に記事削除を依頼する
弁護士もサーバー管理者に対して記事削除を依頼します。「削除依頼の内容証明郵便」を用意して削除要請をするという本質的な部分は変わりません。
弁護士に依頼するメリットとしては、個人が削除申請するよりも相手側の反応がいいところです。法律を扱うプロフェッショナルを敵にまわすというのは非常にナンセンスだからです。相手がスムーズに対応してくれれば10日前後で記事が消えます。
【相場】
着手金:0円
報酬金:5万円
④ドメイン登録代行業者に記事削除を依頼する
こちらも「削除依頼の内容証明郵便」を送って行ないます。サーバー管理者への依頼と流れは基本的に同じです。順調にいけば10日前後で記事が消えます。
【相場】
着手金:0円
報酬金:5万円
⑤裁判所で仮処分の申し立てを行なう
上記の通り削除依頼をしたからといって、サイト管理者や投稿者が削除に応じないケースもあります。
その場合はより相手にプレッシャーを与えるため、裁判所に投稿の削除を求めて仮処分命令の申し立てを行ないます。仮処分命令の申し立てによって該当する記事や投稿を強制的に消すことが可能です。
ただし、被保全権利(侵害を受けている権利)と保全の必要性(侵害を受けていること)を証明しなければなりません。証明さえできれば仮処分命令によってサイト管理者は強制的に記事や投稿を削除することになります。
サイト運営者が個人であっても、企業であっても、これは絶対に覆りません。ただ、申し立てから発令までおよそ1ヶ月~2ヶ月程度かかります。
担保金も必要になるので30万円~50万円を用意しなくてはなりません。こちらは後日還付されるのでご安心ください。
【相場】
着手金:20万円
報酬金:20万円以上
記事削除は自分でできる簡単な方法を試してから弁護士に!
いかがでしたでしょうか?
誹謗中傷されている記事削除について説明させていただきました。基本的にむずかしいイメージのある記事削除ですが、ご自身だけでできる方法も多いのです。
ただ、結果が出るのか不安、時間がかかりすぎてしまうなどネックな部分も多いです。その際は弁護士に依頼して削除してもらうのもいいでしょう。費用はかかりますが効率的に記事削除できます。
完全に消す必要はなく、検索上位で目立たなくていいのであれば、逆SEOという異なる方法もあるので、そちらも検討してみてください。
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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