昨今はインターネットが発達し、SNSなどで顔や名前を明かさなくても、誰もが気軽に情報を発信できる世の中です。普段なら関わることのできない芸能人や著名人とも交流が容易となる一方で、ネット上での誹謗中傷が問題視されています。
年齢を問わず、SNSがコミュニケ―ションの主流となりつつある現代においては、誰もが加害者にも被害者にもなり得ます。このため、ネット中傷に巻き込まれないよう、誰もが注意しなければなりません。
今回は、自身が誹謗中傷の加害者となってしまった場合どこに相談すれば良いのか、また今後加害者にならないために何を注意したら良いのかを解説します。
本記事で分かること
- 誹謗中傷の加害者からの相談が増えている
- 誹謗中傷を行うと逮捕される可能性は?
- 誹謗中傷の加害者はどこに相談したら良いのか
- 誹謗中傷の加害者とならないために注意したいこと
目次
誹謗中傷を行った加害者からの相談が急増
2020年5月にSNSでの誹謗中傷が原因で自ら命を絶ってしまった女子プレスラーの木村花さん。この事件がきっかけで、誹謗中傷を書き込んだ人から「軽い気持ちでやってしまい、後悔している。」「過去の自分のしたことが不安になってきました。」などといった相談が多数寄せられています。
名乗らなくてもカウンセラーに悩みを相談できる窓口には、花さんの死去後、誹謗中傷を書き込んだという相談が7月初旬までに10件あった。相談者は10代から30代の男女で、うち8件は10代女性でした。
誹謗中傷の加害者から弁護士への相談も急増
カウンセラーなどへの相談も増えている一方で弁護士への相談も増加傾向にあります。特にインターネット上の誹謗中傷などの特定を得意とする弁護士の元には多くの相談が寄せられているとのこと。
その相談の多くは「自分が書き込んだものが誹謗中傷になるのか分からないので判断して欲しい。」という内容だそうです。また、書き込んだことに関して問い合わせをしてくる人は、ほとんどが偽名や匿名、非通知など自らのことを明かさずに相談してくるとのこと。
誹謗中傷の加害者として逮捕されることはある!?
SNS上の誹謗中傷は3つの罪に問われる可能性があります。ここからは、問われる罪の種類について具体的に説明していきます。
SNSでの誹謗中傷は名誉毀損罪に問われる場合がある
SNS上の誹謗中傷は、名誉毀損罪に問われる場合があります。名誉毀損罪とは、第三者が閲覧できる状態・場所で証拠を用いて判断できる情報を流し、特定の人物の社会的評価や社会的地位を違法に落とした際に成立する罪のことです。名誉毀損罪が成立する条件は以下の通りです。
名誉毀損罪が成立する条件
- 公然と
- 事実を摘示して
- 特定の人物の名誉を毀損した
具体的には、以下のような誹謗中傷をSNSでされた場合、誹謗中傷してきた相手は名誉毀損罪に問われる可能性が高いといえます。
名誉毀損罪が成立する可能性が高い誹謗中傷の具体例
- お前はフォロワーを金儲けの道具としか見てないだろ!この金の亡者が!
- ハイブランド品ばかりで良いな!でも、それ詐欺で稼いだ金だろ?
- お前の家族は万引き犯と人殺ししかいないのか?今すぐ消えてほしい家族だな!
SNSで誹謗中傷され、名誉毀損罪が成立した場合は、民事上の損害賠償請求をされる他、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」という刑事上の責任を追及されることがあります。
SNSでの誹謗中傷は侮辱罪に問われる場合がある
SNS上の誹謗中傷は、侮辱罪に問われる場合があります。侮辱罪とは、証拠を用いて判断できる情報を流していなかったとしても、第三者が閲覧できる状態・場所で特定の人物を侮辱した際に成立する罪のことです。侮辱罪が成立する条件は以下の通りです。
侮辱罪が成立する条件
- 公然と
- 事実を摘示していない
- 特定の人物を侮辱した
具体的には、以下のような誹謗中傷をSNSでされた場合、誹謗中傷してきた相手は侮辱罪に問われる可能性が高いといえます。
侮辱罪が成立する可能性が高い誹謗中傷の具体例
- プロフィール画像を変えろ!気持ち悪いんだよ!
- ゴミみたいな顔を晒すな!
- お前の存在価値なんてないからな!消えたほうが良いよ!
SNSで誹謗中傷され、侮辱罪が成立した場合は、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置される「拘留」、又は1,000円以上10,000円未満の制裁金を納付する必要がある「科料」のどちらかが科されます。
SNSでの誹謗中傷は信用毀損罪に問われる場合がある
SNS上の誹謗中傷は、信用毀損罪に問われる場合があります。信用毀損罪とは、嘘の情報を流したり人を騙したりして、相手に経済的損失を負わせた場合に成立する罪のことです。信用毀損罪が成立する条件は以下の通りです。
信用毀損罪が成立する条件
- 虚偽の風説を流布している
- 偽計を用いている
- 相手の信用を毀損している(経済的損失を負わせること)
- 業務を妨害している
具体的には、以下のような誹謗中傷をSNSでされた場合、誹謗中傷してきた相手は信用毀損罪に問われる可能性が高いといえます。
信用毀損罪が成立する可能性が高い誹謗中傷の具体例
- お前の親が経営している会社ってブラック企業なんだろ!
- ○○さんが関係している会社は、もれなく脱税しているらしいよ
- ○○会社は国産と謳っているが、ふたを開けてみれば9割は外国産らしい
SNSで誹謗中傷され、信用毀損罪が成立した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
SNSで誹謗中傷してしまい実際に逮捕された事例もある
SNSで誹謗中傷した結果、罪に問われ、逮捕されてしまった人も存在します。
高校生を誹謗中傷して無職の少年が逮捕
滋賀県在住の高校生を東京都内在住の無職の少年がSNSで誹謗中傷したとして、名誉毀損の疑いで逮捕されました。無職の少年は、2015年の7月から約1年に渡り、SNSで高校生を誹謗中傷する書き込みをしていたとされています。
具体的には、「様々な女ユーザーに迷惑行為を行い、最終的にはそんなことをやっていないと逃げ惑っている」という誹謗中傷をし続けていました。被害者の高校生は父親と警察署に相談をしに行きましたが、誹謗中傷され続けた高校生は、その翌日に遺書を残して自ら命を絶っています。
被害者の高校生が命を絶ってしまったことで、父は警察に被害届を提出しました。その後、犯人逮捕に向けた捜査が始まり、高校生を誹謗中傷していた無職の少年が逮捕されました。
誹謗中傷の被害者が行うとされる対策
誹謗中傷を受けた被害者側が取る対策としては、「投稿削除依頼」と「発信者情報開示請求」が考えられます。
投稿削除依頼
誹謗中傷にあたる投稿がそのまま残っていれば、瞬く間に他のサイトやSNSで拡散されてしまう可能性が高く、被害が拡大してしまいます。そうなることを防ぐためには誹謗中傷にあたる投稿を削除してもらうしかありません。
そのため、被害者はプロバイダに対して投稿削除依頼を行うことがあります。投稿削除依頼についてはプロバイダ責任制度法にも定められていますが、プロバイダ責任制度法では「送信防止措置」と呼ばれています。
発信情報開示請求がされる
もう一つの対策として、被害者から発信者情報開示請求される可能性があります。発信者情報開示請求が認められれば氏名や住所、メールアドレスなどの個人情報が相手に開示されます。
発信者情報開示請求は何のために行われるかというと、名誉毀損罪や業務妨害罪などの犯罪として刑事告訴するためであったり、損害賠償や慰謝料を請求するために個人を特定することが目的であったりします。要するに、訴訟手続きの準備のために発信者情報開示請求を行うことが多いのです。
誹謗中傷の加害者になると前科がつく?
このように、誹謗中傷の加害者となり被害者が法的な措置を取った場合は、ネットに投稿した書き込みが犯罪に該当するとして逮捕され、有罪になって前科がついてしまう可能性も考えられます。
この時の大きなデメリットとなるのが身柄拘束です。逮捕されてしまうと、取調べを受けるために身柄を拘束されてしまいます。警察から検察に身柄が移された後は、検察が起訴か不起訴かの判断を下すまで最大20日間時間を要します。
仮に起訴された場合、その後裁判を受けることになるためさらに勾留が長引くことになります。
身柄を拘束されることで、これまでの日常生活を送ることが難しくなり会社も休まなければいけません。必然的に、上司や家族にも理由を話さなければいけない状態となってしまいます。
そうなれば、最終的には不起訴になって前科がつかなくなったとしても、会社での評価は下がり居心地が悪くなってしまうこともあるかもしれません。誹謗中傷の加害者になってしまうことで社会的に失うものは計り知れません。
誹謗中傷の加害者となった場合の相談窓口は?
インターネットやSNS上でも匿名で投稿していればバレないだろうと考え、安易な気持ちで誹謗中傷の書き込みを続けてしまった。冗談のつもりで知人のSNSにプライバシーを侵害するような書き込みをしてしまった。このように、本人の軽率な考えで行なったことが後に大ごとになってしまうケースは後を絶ちません。
ネット上の投稿によって相手を傷つけてしまいますし、それが自分に返ってきてしまい、投稿の削除だけで終わらずに刑事告訴や損害賠償請求訴訟を起こされるなどの対策を取られてしまうこともあります。
もしも刑事告訴されて前科がついてしまったら、社会的に失うものは計り知れません。そうならないためにも、もしも誹謗中傷の加害者になってしまったら早急に弁護士に相談してください。
誹謗中傷の加害者にならないようにするために
- 投稿する内容に個人情報が含まれていないか確認
- 多くの人の目に触れてもよい内容か確認
- 匿名の投稿でも訴訟問題に発展する可能性があることを留意する
誹謗中傷の加害者にならないようにするためには、上記の点に注意しましょう。
投稿する内容に個人情報が含まれていないか
個人情報は、誹謗中傷の対象となりやすいものです。積極的に個人情報を公開することにメリットを感じていたり、必要に応じて公開していたりする場合には問題ありませんが、意図せず個人情報を公開してしまわないように注意しましょう。
多くの人の前に触れても良い内容か確認
一度インターネットやSNSに投稿してしまうと不特定多数の人が閲覧できる状態となってしまいます。投稿する前には、投稿した内容を目にした人たちがどのような反応をするのか、といった想像をおこなった上で投稿するようにしましょう。
匿名の投稿でも訴訟問題に発展する可能性があることを留意する
インターネット上の投稿は、匿名で投稿できると考える人も多いですが、プロバイダへの情報開示請求などで個人を特定できるようになっています。
実際に悪質な投稿に対しては訴訟問題に発展しているケースもあるため、匿名だからといってネット中傷に関わることのないようにしましょう。
誹謗中傷の加害者となった場合の対応 まとめ
この記事では、自身が誹謗中傷の加害者となってしまった場合どこに相談すれば良いのか、また今後加害者にならないための注意点を解説しました。
ポイント
- 誹謗中傷を行うと逮捕される可能性がある
- 誹謗中傷を行ってしまった場合は速やかに弁護士へ相談する
- 投稿する前に個人情報が含まれていないことを確認する
- 不特定多数の人が閲覧しても問題ない内容か確認する
インターネット上の誹謗中傷は誰もが被害者にも加害者にもなり得るものです。匿名だからといって安易な行動を起こすと、裁判にまで発展する可能性があります。
今回ご紹介した気を付けるべきことを参考にして、利用方法に注意しながらSNSを活用しましょう。
投稿者プロフィール
- 誹謗中傷対策とWebマーケティングに精通した専門家です。デジタルリスク対策の実績を持ち、これまでに1,000社を超えるクライアントのWebブランディング課題を解決してきました。豊富な経験と専門知識を活かし、クライアントのビジネス成功に貢献しています。
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