あなたは1日の中でどれくらいインターネットやSNSを利用していますか?一瞬の気の緩みで他人に対して誹謗中傷とも捉えかねない書き込みを行ったことはないでしょうか?
もしかしたら、その書き込みがきっかけであなたの元へ裁判所からの訴状が届くかもしれません。最近では、誹謗中傷で困っている人のために書き込んだ人物を特定しやすい制度の整備も進められており、誹謗中傷は「うっかり書き込んでしまった。」では許されないものとなっています。
ここでは、あなたが誹謗中傷を行い裁判所から訴状が届いた場合、あなたの将来はどうなるのか解説します。身に覚えがないのに訴状が届いた際の対応方法についても解説いたします。
本記事で分かること
- 誹謗中傷を行い訴えられた場合の罪と損害賠償の額は
- 裁判を行うと世間に知られてしまうのか
- 身に覚えがないのに訴状が届いた場合の対応方法
誹謗中傷で訴えられたらどうなる!?
訴えられた場合、一番気になるのが罪に問われる可能性や損害賠償を求められるのかなどではないでしょうか。もちろん、罪に問われる可能性もありますし、場合によっては損害賠償を支払う可能性も大いに考えられます。
誹謗中傷を行うと問われる可能性のある罪
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 信用毀損罪
- 業務妨害罪
誹謗中傷を行うと上記の罪に問われる可能性があります。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、第三者が閲覧できる状態・場所で証拠を用いて判断できる情報を流し、特定の人物の社会的評価や社会的地位を違法に落とした際に成立する罪のことです。
侮辱罪
第三者が閲覧できる状態・場所で特定の人物を侮辱した際に成立する罪のことです。
SNS上での誹謗中傷は、この侮辱罪に問われる場合があります。
信用毀損罪
信用毀損罪とは、嘘の情報を流したり人を騙したりして、相手に経済的損失を負わせた場合に成立する罪のことです。
業務妨害罪
これは企業に対して誹謗中傷を行った場合に問われる可能性のある罪です。「あの店では腐った野菜を使っているらしい。」など虚偽の投稿をして飲食店の業務を妨害すると、業務妨害罪となります。
損害賠償を支払う可能性も!?
インターネットやSNSであなたから誹謗中傷を受けた人が名誉毀損にあたると判断した場合、書き込みを行ったあなたに慰謝料請求(損害賠償請求)を行うことができます。
名誉毀損の慰謝料の相場は、行為の態様や加害者・被害者の立場によって大きく異なります。例えば大きなメディア(新聞屋テレビなど)が被害者に対して業務妨害を伴う名誉毀損を行った場合は、数百万円以上の損害賠償を支払う可能性が高いです。
これに対して個人がネット上で個人を相手に名誉毀損的な投稿をした場合は、10〜50万円が相場と言われています。
しかし、同じネットでの誹謗中傷であっても被害者が事業者の場合は慰謝料が高額になりやすい傾向があります。相場として被害者が事業者であれば、50〜100万円程度になるかもしれません。
さらに事業者の場合、誹謗中傷によって売り上げが落ちるなど営業損失が発生すれば、その分の被害額も上乗せされて損害賠償請求をされます。
誹謗中傷で損害賠償が認められた事例
茨城県守谷市の市長である原告が、被告が発行する週刊誌「FRID AY」の平成29年4月28日号に掲載された「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」と題する記事及び、被告の運営するインターネット上のウェブサイト「FRIDAYデジタル」に同月142 日に掲載された同旨の内容のネット記事によって、名誉を毀損された旨主張して損害賠償請求を行った裁判。
判決では慰謝料150万円の支払いと弁護士費用15万円の支払いが命じられました。
裁判を行うことで自身に及ぶ影響は
裁判を行う上で心配なのが、裁判のことが職場など世間に知られてしまわないか、だと思います。訴訟は原則として公開の法廷で行われます。誰でも傍聴することができますし、裁判所の「期日簿」にも、当事者のあなたの名前が貼られます。
しかし、訴訟の全てが積極的に世間に公表されるということではありません。世間で注目されている事件はメディアで取り上げられることもありますが、多くの事件は当事者のみでひっそりと行われるのが通例です。
訴状が届いた場合の対応は?
万が一、自宅に訴状が届いた場合、まず何から対応したらいいのかパニックに陥ってしまうと思います。ここからは「もしも訴えられたら」を想定して対応方法を解説します。
まずは弁護士へ相談を
裁判所から訴状が届いたら、まずは慌てずに書面を確認しましょう。弁護士に依頼をせず、本人で対応する「本人訴訟」をすることも可能ですが、精神的にも体力的にも厳しいと考えられますので、裁判のプロである弁護士に迷わず依頼することをオススメします。
弁護士に依頼すると以下の業務をあなたに変わって行ってくれます。
- 相手方の言い分に対する答弁書の作成
- 答弁書の提出
- 自分の言い分を主張した書面の作成や証拠の提出
裁判の流れ
裁判は「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類に分けられます。
ポイント
- 刑事裁判は刑罰が下される裁判
- 民事裁判は損害賠償の請求をすることが出来る裁判
刑事裁判の流れ
- 第一審手続き
- 控訴
- 上告
- 再審
刑事裁判は上記の流れで行われ、裁判統計資料によると期間は約3ヶ月です。
民事裁判の流れ
- 提訴
- 被告への送達
- 第一回期日
- 弁論準備
- 尋問
- 最終弁論期日
- 判決
民事裁判は上記の流れで行われ、民事裁判の始まりから終わりまでの期間は約12〜13ヶ月の時間を要します。民事裁判は内容によって大きく期間が異なります。最短で8ヶ月、順調に裁判が行われて1年前後かかると考えていた方が良いでしょう。
示談とは
民事裁判によらずに、当事者間による同意によって解決することを指す「示談」。示談を行うことで、刑事処分を免除または減刑になるようにしてもらうことや、第三者に事実が知られないようにしてもらう意味合いも持っています。
また、私生活や業務の平穏が侵害されないようにすることもメリットです。
身に覚えがないのに訴えられた場合
ここからは身に覚えがない内容で訴状が届いた場合の対応方法についてご紹介します。
事実無根でも必ず対応を!
身に覚えがない内容が書かれているからと、訴状を放置してしまうことは大変危険です。答弁書を出さずに、欠席をすると欠席判決といって身に覚えのない内容でも原告が請求するとおりの判決が下されてしまいますので、必ず対応をする必要があります。
裁判のプロである弁護士に相談を
身に覚えのない場合でも、弁護士への相談がオススメです。
通常、訴状の届いた日から1ヶ月程度先に「第1回口頭弁論期日」という裁判所に出頭が必要な日が設けられ、その1週間程度前に答弁書(こちらの言い分を書面にまとめたもの)の提出期限が設けられています。
この1ヶ月の間に弁護士へ相談に行くなどの準備を行いましょう。
誹謗中傷で訴えられた場合のまとめ
この記事では、誹謗中傷で訴えられた場合の裁判の流れや準備しなければならなことについて解説しました。簡単にポイントをまとめておきます。
ポイント
- 誹謗中傷を行うと名誉毀損罪を始めとする4つの罪に問われる可能性がある
- 被害者が個人の場合支払う可能性のある損害賠償額は10〜50万円
- 被害者が事業者の場合支払う可能性のある損害賠償額は50〜100万円
- 裁判を行ったことを世間に知られる可能性は低い
- 身に覚えのない内容で訴状が届いた場合は放置をせずに弁護士へ相談
誹謗中傷で訴えられた場合は、罪に問われることはもちろんのこと損害賠償を支払う可能性が考えられます。裁判を行うことで、精神的にも肉体的にも疲労が溜まり、この時初めて誹謗中傷を行ったことを後悔するかもしれません。
損害賠償以外にも弁護士費用も支払わなくてはならないので、誹謗中傷を行うとたくさんの時間とお金を無駄にしてしまいます。インターネットやSNSで書き込みを行う際は、内容をよく確認し、誹謗中傷として捉えかねないか考えて行動しましょう。