芸能人や有名人に対するインターネットやSNS上での誹謗中傷が大きな社会問題になっています。芸能人は公の場で活動することから身近に感じられる存在である反面、きらびやかな生活に対する嫉妬心や妬みなどからインターネット上に悪口や誹謗中傷を書き込む人たちがあとを経ちません。芸能人に対してだけではなく、インターネット上で誹謗中傷行為を行うことで逮捕され罪に問われる可能性があります。
今回は、芸能人へのインターネット上での誹謗中傷に対する逮捕事例や、問われる罪などについて詳しく解説します。
本記事で分かること
- 芸能人へのインターネット上での誹謗中傷による過去の逮捕事例
- 芸能人へのインターネット上での誹謗中傷により問われる可能性のある罪
- インターネット上で誹謗中傷を受けた場合の対応方法
芸能人への誹謗中傷は、れっきとした犯罪行為です。インターネットでの誹謗中傷が社会問題となっている昨今において、インターネットの使い方は誰もが見直しておくべきでしょう。ぜひ本記事を全ての方に参考にしていただけたらと思います。
芸能人を誹謗中傷し逮捕された事例
芸能人に対する誹謗中傷は今に始まったことではありません。過去には、芸能人への誹謗中傷による逮捕事例もあります。ここでは、過去の2事例についてご紹介します。
川崎希さんへの誹謗中傷
元AKB48でタレント・実業家の川崎希さんは、インターネット上で受けた誹謗中傷に対して、民事と刑事両面から法的措置を講じていくことを2019年に発表し話題になりました。川崎希さんは妊娠・出産についてSNSで発信した際に「自宅で待ち伏せしよう」「放火のチャンス」「子供を虐待している」などと書き込まれる誹謗中傷や、インターネット上に自宅の住所を晒されるなどの被害を受けていました。
これらの被害を受けて、誹謗中傷の投稿者である2人の女性を発信者情報開示請求を通して特定することに成功し、この2人の女性は逮捕され書類送検されました。
最終的に、この2人の女性は警察や検察庁での取り調べに対して深い反省を見せたことから、川崎希さんはこの2人への刑事告訴を取り下げています。川崎希さんのこの勇気ある行動と対応は、世間から大きく評価されました。
スマイリーキクチさん誹謗中傷事件
お笑いタレントのスマイリーキクチさんは、1989年に発生した女子高生コンクリート詰め殺人事件の実行犯であるというデマをインターネット上に流されたことで、10年以上に渡り誹謗中傷を受け続けるという被害に遭いました。
このデマは事実無根であるにも関わらず、多くの人がインターネット上の偽の情報を真に受けてさらに拡散するなどし、被害を大きくしました。最終的に2009年には、19人もの人物が一斉摘発を受けています。スマイリーキクチさんの誹謗中傷事件は、芸能人への誹謗中傷により逮捕者が出た事件の先駆けとも言えます。
芸能人への誹謗中傷に対する逮捕・問われる罪は?
芸能人に対する誹謗中傷行為で逮捕された場合、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。ここでご紹介する罪状は、芸能人に対する誹謗中傷だけではなく一般人への誹謗中傷行為に対しても該当します。
名誉毀損罪
インターネット上の誹謗中傷で相手の名誉を傷つけた場合、名誉毀損罪に問われる可能性があります。名誉毀損罪は刑法で以下のように定められています。
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法230条
言葉の種類や誹謗中傷の程度は場合によりますが、誹謗中傷を受けた芸能人がそれにより「社会的評価を下げられた」と感じた場合、名誉毀損罪が成立する可能性が高いと言えます。
侮辱罪
インターネット上で事実と異なる内容で誹謗中傷行為を行った場合、侮辱罪に問われる可能性があります。侮辱罪は刑法で以下のように定められています。
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用:刑法231条
社会的評価が下げられたと判断される名誉毀損と異なり、言葉そのもので相手を傷つけたと判断される場合には侮辱罪が適用される可能性が高いと言えます。
信用毀損罪
信用毀損罪は、刑法で以下のように定められています。
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法233条
信用毀損罪は、嘘の情報により第三者からの信用を損ねたと判断される場合に問われる罪です。この場合、書き込まれた情報が嘘の場合は信用毀損罪が適用される可能性が高いですが、この事実が本当の場合には信用毀損罪にはあたりません。一方で信用毀損罪には問われなくとも、書き込んだ内容によっては名誉毀損罪などが適用される可能性が考えられます。
一般人でもネット誹謗中傷は責任追及できる!対応方法は?
芸能人ではなくとも、インターネット上で誹謗中傷を受けた場合には投稿者に対して責任追及することが可能です。一般的に以下のような段階を追って責任を追及していくことになります。
削除依頼
インターネット上のサイトやSNSなどに誹謗中傷にあたる内容を書かれた場合には、そのサイトの問い合わせページや削除依頼フォームを通じて、サイトの運営者に対して削除依頼を申請することができます。
SNSなどには利用規定が定められているため、その利用規定に違反する投稿や書き込みである場合には運営側から削除してもらうことができます。しかし、サイトの利用規定に違反しない投稿の場合には投稿者の表現の自由を尊重する意味でも安易に削除対応はしてもらえないと思っておいた方がいいでしょう。
投稿者の特定
削除申請が通らない場合は、投稿者に直接投稿を削除してもらうよう依頼する必要があります。そのほかにも、内容的に身近な人間の誹謗中傷であることが分かる場合、相手を特定して事実をはっきりさせたいということもあるでしょう。実名登録などで相手が分かっている場合以外は、IPアドレスを辿って相手を特定しなければならず、裁判所を通して発信者情報開示請求をしていく必要があります。
発信者情報開示請求については次の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
慰謝料・損害賠償請求
誹謗中傷投稿に対して慰謝料や損害賠償の請求を行うことが可能です。発信者情報開示請求により相手の身元を特定し直接請求する場合もありますが、相手が応じない場合には損害賠償や慰謝料請求のための民事訴訟を起こすことになります。同時に、名誉回復のための措置の要求として謝罪広告や取り消し広告の掲示を要求することもあります。
刑事的責任追及
誹謗中傷内容が悪質な場合、警察に被害届を提出することで刑事告訴を行うことも可能です。誹謗中傷によって問うことができる罪は、冒頭でご紹介したいような名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪などが該当します。
まとめ・芸能人への誹謗中傷は逮捕されて罪に問われる可能性がある!
芸能人に対する誹謗中傷で逮捕者が出た過去事例や問われる可能性のある罪について解説しました。簡単にポイントをまとめます。
芸能人への誹謗中傷での逮捕と問われる罪・まとめ!
- 川崎希さんやスマイリーキクチさんへの誹謗中傷など、芸能人へのインターネット上での誹謗中傷は数え切れないほど多く、逮捕者が出ている事例もある
- 芸能人に限らず、インターネット上の誹謗中傷で逮捕されると、名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪などに問われる可能性がある
- インターネット上での誹謗中傷への対処は、削除依頼や投稿者の特定、最終的には慰謝料・損害賠償請求、刑事的責任追及へと対応が進むことになる
芸能人へのインターネット上での誹謗中傷は大きな社会問題です。インターネットを利用する全ての人は、改めてインターネットを利用する上でのルールを見直す必要があると言えるでしょう。